<追悼、マルコ・パンターニ>



 


寂しい、悲しいバレンタインデー。

イタリア時間の午後9時過ぎ、滞在先のRiminiのレジデンス(長期滞在用ホテル)で、
Marco Pantani(マルコ・パンターニ)の遺体が発見されました。

彼は、自転車競技の最高峰とも呼ばれる「トゥール・デゥ・フランス」と
「ジーロ・ディ・イタリア」というレースで、なんと同じ年(1998年)に
両競技を制覇するという偉業を成し遂げたイタリア人として2人目の自転車競技の選手でした。


自転者競技は、戦後最初に復活したスポーツで、
イタリアではサッカーに並ぶ人気のスポーツです。
一般の人々の日曜日に楽しむスポーツとしてもいまだ根強い人気を持っています。



さて、Pantani、優勝後は、すぐにテレビのコマーシャルに引っ張り出され、
いろんな番組のゲストとして招かれ、
つまり今日のスポーツ選手のサクセスストーリーを順調に手にしていったのです。

ところが、ドッピングといわれる薬の問題が発覚し、
なんとレース中に逮捕されてしまい、 それ以来一人で家に引きこもりがちになってしまいました。

再復帰を狙ったレースでは途中で事後に会い完走できず、 不運がまといついた感がありました。


まだ、細かい検死を行っているところで、死因については断定できないのですが、
おそらくは自殺であろうといわれています。

極度のうつ病に悩み、療養施設へも進んではいり、治療していたそうです。
昨年、数少ない友達の一人がキューバへ気晴らし旅行に連れて行き、
その後、一人でキューバへ戻ったときに好きな人ができたなどとも言われています。
そして、その話が順調には発展しなかったとか・・・

ちょうどバレンタインデーのその日に命を自ら立ったのだとしたら、
そのあたりも関係しているかもしれません。

ご両親も遠くギリシャに住んでいて、 とにかく全くの孤独だったことが一番の要因でしょう。
どうか天国では、たくさんの元同僚や天使たちに囲まれて にぎやかに暮らしてほしいと願います。



ところで、パンターニほど人気者でなくても、 元スポーツ選手の自殺が意外に多いのです。
(まだパンターニが自殺したとは発表されていませんが)

つまり現在のスポーツ界の何かが間違っているのではないでしょうか?

陽介が小学1年のときサッカー教室へ行きたいというので、連れて行きました。
担当のインストラクターが、「サッカーは人生教育です!」
なんてことをおっしゃったので、[よっしゃ!」と入会させたのですが、
インストラクターは常に親の顔色を伺い、
親たちは、まだ小さい子供にすでに将来のサッカー選手としての青写真を描いているようで、
パスを間違ったりするとしかりつけていました。

もちろんそんな親たちばかりではありません。わたしを含めて…
「元気に走っているのをみるだけでうれしいわよねぇ。」 などと目を細めておりました。
でも、そういう親を持つ子供はほとんど1,2年でサッカーをやめ、
他のスポーツに転向しました。


又陽介は、ミニバイクとオフロードのバイクレースにも参加していたことがあります。
ここでも似たようなことがありました。
サッカーに比べれば格段に環境は良かったのですが、
やはりいつも高順位に付く子供の親が、その場の主導権を握り、他が追随する。

まだ中学生になったばかりの子供に早くもスポンサーが付き、
コスチュームやバイクを献上して、なまえを貼り付けてもらう!

一度、ミニバイクのレース中に陽介の前の3台がこけてしまったことがあります。
そのまま走り続けていればかなりいい順位につけたと思うのですが、
そのとき陽介は止まって彼らに「大丈夫?」と声をかけ安否を気遣っていました。

いつも一緒に練習している友達が相次いでこけてしまいびっくりしたようです。
そして、レース後話を聞いてみるとそばにいたレースの管理局の人が
「早く行け!」と叱りつけたことに、よりびっくりしたということです。



ここ3年間、陽介はプールに通っています。
彼は週に2回、50分間の練習だけですが、 同じプールでもレースをする子供たちのグループは、
週に6日、毎日3時間の練習があります。

意外に厳しいイタリアの学校は、宿題を山ほど出しますが、
プールの待合室で宿題をしている姿を見ることがあり、 ちょっと気の毒なかんじがします。


いろんな競技で、新記録が塗り替えられ、若年化が見られますが、
はたして手放しで喜べることなのでしょうか?

遊びたい年頃にひとつのことだけしかさせてもらえず、 友達は競争仲間だけ。



プロの選手に話を戻すと、
彼らを取り巻く人々がもっと彼らの本当の幸せを考えてあげるべきだと思います。

強い選手を持つチームは有名になる。
そんな選手のトレーナーも有名になる。
今、多くのサッカー選手たちも薬を使ったと取り沙汰されていますが、
ほとんどが、チームの専属トレーナーたちに勧められて、薬を服用し始めたということです。
ビタミン剤という感じで何気なく用い始め、深みにはまってしまうようです。
 
スポーツマンシップという言葉は死語になってしまったのでしょうか。
昔の侍たちの堂々とした渡り合いにも似た スポーツマンシップを見せてくれるからこそ、
多くの人々をひきつけるのがスポーツではなかったのでしょうか?



今回は少し暗い話題になってしまいました。
できれば避けて通りたい話題が、残念ながらたくさん存在します。

世間がバレンタインデーということで盛り上がっていたそのときに
Pantaniがひとりでどんな気持ちだったかと思うと、 やっぱり避けてばかりはいられないと思ったのです。

            <管理人:恵子>  

 

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