ビデ


ガイドをしていたころによく頂いたご質問を思い出しました。

「トイレの便器の横に同じような格好をしたものがあるんですが、何ですか?」

フランスが発祥の地だということですが、詳しくは知りません。
とにかくここイタリアでも一般家庭に、ホテルの部屋に
国鉄の駅にある有料トイレなどにも見られるもので、
「ビデ」といい、トイレを使った後に使用するものです。

日本ではウォシュレットなどという名でおなじみのもの。
日本のものはトイレと一体になっていますが、こちらは別々です。


古代ローマ時代は貴族の家にはもう立派な浴場があり、
一般市民のためにも公共浴場が発展していて、
2000年前の市民たちで一番清潔だったのがローマの人々だった
といっても過言ではありません。

ところが西ローマ帝国崩壊の後、長い中世の時代に、
水道橋や公共浴場が破壊されたままに放置され、
一般市民には浴場が遠い存在になってしまいました。

余談ですが、かのミケランジェロにして、
入浴は体に良くないから、拭くだけにしなさいと言っていたということですし、
仕事に夢中になり、寝食を忘れて何週間も(何ヶ月という説もある)
仕事着を着たまま生活をし、ついに体を壊してしまったときに、
弟子たちがブーツを脱がせようとしたら、
ブーツが足にくっついてしまって、足の皮がはがれたという
エピソードが伝わっています。

時代が下り、ナポレオンのころから今日風のビデが登場し、
洗顔は洗面用の陶器で、下半身は(足を含めて)ビデで洗う
というようになったようです。

ナポレオン自身は豪華な金の蛇口が着いたお風呂を使っていましたが、
一般市民はふんだんにお湯を使う入浴をしょっちゅうできるわけではなく、
つい最近まで、
土曜の夜か日曜の朝入浴をするだけという人達がたくさんいたようです。

そこで、汚れが気になる下半身は、ビデを使って毎日、
あるいは一日に何回か洗っていたようです。


こればかりは私も何年もこちらに住んでいますが、正式な使い方を
教わるチャンスにいまだ恵まれていません。

大きく二つのタイプがあり、ひとつは噴射式、
ひとつはためおき式といいましょうか、
噴射式は呼んで字のごとく下のほうから噴射して洗うのですが、
お水とお湯の蛇口を間違えるとデリケートなところにやけどをしてしまうので、
今はためおき式のもののほうが多いようです。

小学館の辞書には、そしておそらく他の辞書にも
ビデ=局部を洗浄する為の水盤上の用器。
とありますが、何もそう限った使い方をすることはありません。

夏場、サンダルで出かけて帰宅したときなどは、
さっと足だけ洗うことができて本当に便利です。


とにかく初めてご覧になると本当にどちらに用を足していいか
迷われると思います。
排水溝の大きいほうが便器。小さいほうがbide(仏語はbidet)です。

本当かどうか分かりませんが、
いまや世界的に有名なファッションデザイナーの方々も
フランスに留学して初めてbideを見たときは遣い方が分からず、
野菜を洗ったとか・・・


               <Keiko> 

 

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