職業の自由化


 

イタリアには、よく言えば保護され、

悪く言えば利権のうえに胡坐をかいているような職業が少なくありません。

数日前に、公証人・薬局・タクシーらの職業が自由化になりました。

 

これまでは、つまらない書類を作るにも横柄な公証人のところに出向き

アポイントをとるのに何日も待たされ、高い料金を払わねばなりませんでした。

 

薬局で消毒用の脱脂綿を買ったといったら隣の奥さんに注意されました。

同じような品質のものが薬局ではスーパーの5割も10割も高いことがあるからです。

 

そしてタクシー、手を上げてとまってくれても行き先が自分の家と反対方向なら

いかないなどというのは日常茶飯事でした。

 

こういう職業は市や県が発行する限定された許可証がないと開業できませんでした。

ですから自由化されれば消費者にとっては、より好いサービスを

相応な金額で受けることができるようになるだろうと期待します。

 

ところがこの決定が下されると同時にタクシー運転手達のストやデモが繰り広げられ

若干の手直しをすることになったようです。(大物の政治家が後ろにいるのかな?)

 

そもそもイタリアにはタクシー会社は存在しません。

みんな個人タクシーです。

センターを設け、交換手を置いて配車などはしていますが、あくまでも組合で

タクシーや許可証は個人の持ち物なのです。

その許可証を手に入れるのはなみたいてのことではありません。

何十年に一度、新たな発行が人口に応じて行われるので、ほとんどの県や市では

何十年前と同じ量です。

そこで闇取引で小さな家を買うほどの料金で、権利を買い取る人がほとんどです。

もしくは本人は高齢で運転が出来なくても、そのライセンスを貸し付けて収入を得ることも出来ました。

 

それが自由化されれば、タクシーにふさわしい車を所有し、運転歴が充分で、

道路の知識など、的確だとなれば許可されるようになるのです。

 

これまで、権利をむさぼっていた人、高い金額で許可証を買ったばかりの人、

貸し付けて収入を得ていた人・・・それぞれに思いはあるのでしょうが、

もっと前向きに考える時期が来ていると思います。

 

イタリアのタクシーは人口当たり2台でヨーロッパでは最少、

ロンドンではそれが9台だそうです。

これまでイタリアにこられてタクシーがつかまらず、大変な思いをなさった方がおいででしょう。

あるいは法外な金額をとられた方もおいででしょう。

競争が高まり、切磋琢磨して全体の質が向上することは

イタリア人ばかりでなく、観光客にも利のあることだと思います。

 

うち(ドライビングガイド)はタクシーではありませんがやはり許可証が必要です。

そしてうちのカテゴリーもおそらく同じで自由化されるでしょう。

それをうちはちっとも気にやんでいません。

これまで、息子が同じ職業をしたいと思ったら高い許可証を買って与えるか

自分が引退してそれを息子に譲るしかなかったのが、

親子で同じ仕事ができるようになるのです。

うちの場合はイタリアの歴史や美術の勉強と外国語の取得が必要ですから簡単ではありませんが。

 

とにかく一時的に収入が少し減ったとしても業界全体の評判が上がれば

ちゃんと仕事をしている人には決してマイナスにはならないと思うのですがどうでしょうか。

 

最後の最後の心配は、

かつてローマの市長をしていたルテッリ(現観光省大臣)が自分でバス会社を作り、

ほかの観光バスを締め出す政策を押し通したことです。

今度も大臣のどなたかが大手のタクシー会社を作るための政策ではなかろうかと・・・

小さな疑惑が頭をもたげてきます。

 

時々イタリア語が全くわからなかった頃が懐かしいです。

おっと、これも前向きの考え方ではありませんね。(笑)

                     Keiko


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