CUCINA  (台所)

 

イタリア人が誰かの家を訪問すると、あるいは我が家へイタリア人が遊びに来ると
話込むのはたいてい台所。

台所のことはCucina(クチーナ)といい、料理を意味する言葉と同じです。

こちらではダイニングキッチンのところが多く、朝食や家族だけでの食事には
そこで食べる人たちが多いです。

だからCucinaのどこかにそこそこの大きさのテーブルがあり、いくつかのイスがあります。

そのテーブルが調理をするときには調理台になり、準備が整えばきれいにして
テーブルクロスをかけて食卓になるのです。

どんなに立派なサローネ(居間・応接間)があっても、人はCucinaに集まります。

というのも、主婦がおもてなしをするためにたとえばコーヒーを作るためにCucinaへ行くと、
数秒間はサローネで待っているのですが、おしゃべり好きなイタリア人は一人でサローネで待つことを好まず、
Cucinaへ入ってきておしゃべりを始めるのです。

また、Compagnìa(コンパニーアと読み i にアクセントがある。付き合いという意味)ということを大切にする
イタリア人は主婦が一人でCucinaへこもってしまうのを気の毒に思うようです。

男子厨房に入るべからず!で育った私にはいまだになじめない習慣のひとつです。

台所では自由に動きたいから誰も入ってきてほしくはないので、
いつも家族や友人たちにそういうのですが、なかなかイタリア人には通用しません。

以前の家はDLKがひとつの空間だったので、私は喫茶店のマスターがカウンターの中にいるような
状態で接していたわけですが、洗い物をためないように気を使いました。

でも、夕食後楽しい映画などを家族がテレビで見るときにガチャガチャとお皿を洗うわけにも行かず、
翌朝洗ったりしたものでした。(今もそうです、自分も見たいときには。)

そしてまた、どこのお宅の台所もぴかぴかなのに驚かされます。
毎回オリーブ油を使って料理するし、大きなパンを家で切ったりするのですが、
油のにおいもパンくずも見たことがありません。

ガスレンジの火が出るところもピッカピカです。

しかもまるでショールームのように片付いているではありませんか。

こちらの食事にはお皿を使うだけなので何枚でも重ねられるので、
日本に比べると収納場所をとらないということがいえるかもしれませんが、とにかく整然としています。
そして収納庫のドアもピッカピカ。

こちらの人はものを大事にします。

ある読者の方はこちらに住んでおられて出産のためにご主人の親元へ行かれたのですが、
そこに、ご主人の小さいときに使っていたものなどが全部きれいに保存されていて驚かれたそうです。

うちにも、主人のおじさんが子供のころに使っていた歩行器がありますし、
主人が生まれたときにおばあさんや叔母さんたちが作った手縫いの刺繍入りの
肌着を義母からたくさん頂きました。

ことほど左様に物を大切にするわけで、台所をはじめ家中をぴかぴかに保つのも
自分の家を大切にする気持ちの表れなんですね。

                                Keiko

 

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