義妹の誕生パーティー

 

11月24日が二人いるPaoloの妹の上のほう、デリアのお誕生日。
いつもは電話でおめでとうをいうくらいだけど、今年の頭に大きな家を買った
もう一人の妹ローリーが、何かにつけて自分ちでパーティーを開きたがり、
デリアの誕生パーティーの知らせが来た。

でも次の日が土曜日なので、パーティーは土曜にすることになった。
すでにクリスマスの買い物をする人たちで混雑が始まったショッピングセンターで、
小さな金のブレスレットをお祝いに用意して、うちとはローマをはさんで反対側の
ローリーのうちへ向かった。

高速道路を降りて程ない彼女の家へ行く途中、曲がり角ごとに灯りがともっていた。
道を知らない友人たちのためにこうして夜なら灯りをともし、
昼間なら風船を結びつけたりするものだけど、兄弟だけが集まるものと思い込んでいた私たちは、
ご近所のためのものだと思っていたら、最後の灯りはまさしくローリーの家の門にともされていた。

すでに3台の車が止まっている。
最後に停めたらしい車の置きかたが悪くて、何度か切り返しをしてPaoloは車を停めた。

Paoloが駐車している間に私が考えていたことは、
「何てことだ、兄弟だけのうちわの集まりだと思って普段着で来てしまった。
たくさんの人が来るのだったら多少はましな装いできたのに・・・」

最近太ってしまってついつい楽な服装ばかりで過ごすようになり、
年のせいか開き直りも加わって、あまりおしゃれをしなくなった。
これではいけないと思いつつもストッキングにヒールなんてもうずいぶんとご無沙汰している。

そんなことを思いながら玄関のドアを開けてみると、

(このうちも門は開けっ放し、ドアにも鍵がついたままである。
もちろん一人でいるときには閉めているけれど、人がいるとはいえ、
あぶないといえばあぶないのにあまりそういう感覚がない。
イタリアを怖いところだと思っている方には信じられないかもしれない。)

ローリーの後ろに予想通り知らない顔がいくつか見えた。
なんてことだともう一度思いながら、Paoloがマイケル・ジャクソンと呼んでいる
きんきらきんのジャケットをぬいだ。

皮のジャケットで、内側にキルティングが施してあって暖かいので、
全体が金色で、なおかつ襟と袖口には金のスパンコールという
ひとつ間違うととっても下品になってしまうようなデザインだけど、素材の皮が上等で、
何とか一線を保ってくれているジャケットを着てきたのだった。

すぐに知らない人たちとの自己紹介が始まる。
握手をしながら名乗りあうのだが、一度に名前を覚えられない。
相手も決して覚えていない。「Keiko」なんて聞いたこともない名前だし・・・

ダイニングルームにはながーいテーブルが用意され、先に来ていた人たちはすでに
何かを口にほおばっていた。

そこへ飲み物を持ってきたのは9月に結婚したいとこのご主人だった。
結婚式以来の再会。
このいとことは、これまでの約20年の間に数えるくらいしかあったことがなかったのに、
2ヶ月の間に2回もあってしまうなんて。

そうこうしているところへ、デリアのフィアンセが彼の妹やその後主人たちに
伴われてやってきた。
彼は車を運転しないので、いつもならデリアの運転で来るのだけど、
今日はデリアが先に来てパーティーの準備をしなければいけなかったので、
仕事のあと、こうして自分の妹たちとやってきたのだった。
ちなみに彼はペルー人。初対面のときにはFujimori元大統領の話をしたものだ。

* イタリアでは、お誕生日を迎える人が振る舞いをする。*

会社などへも、プチケーキの詰め合わせなどを持っていき、
「今日は私の誕生日だから、皆さん祝ってください。」と振舞うのだ。
もちろん知っている人はすでにプレゼントの用意をしているけれど、
知らない人たちも両ほほへの暖かいキスと抱擁で祝ってくれる。

目をテーブルに戻すと、プラスチックのお皿やコップがたくさん並んでいる。
げんなり。

屋外のピクニックは別として、私はこのプラスチックのお皿やコップを見ると食欲が半減する。
今夜は人数が多いのでしょうがないかもしれないけれど、
友達の中にはたとえ4,5人の夕食でもいつもプラスチックというひとがいる。

我が家にもそろった食器がそんなにあるわけではないけれど、
兄弟が全員そろったときのために必要なくらいは用意している。

たとえ柄違いのお皿でも私は瀬戸物のお皿で食べたーい!

と話がかなりそれたが、そのころにはまたデリアの友人のセネガル人カップルも加わり、
とっても国際色豊かなパーティーになってきた。
足りないのは北アメリカとオセアニアだけだ。

Orecchietteという耳たぶのような形のパスタにはかぼちゃのソース、
そしてポレンタというとうもろこしの粉を練り上げて腸詰め入りのトマトソースでいただく
冬ならではの庶民的な一品。
さらに、七面鳥のスカロピーネにマッシュルームの付け合せを
パスタは白の、お肉は赤のプラスチックのお皿で食べたのだった。

おいしいワインもプラスチックのコップでは香りがなくなってしまうような気がする。

もちろん一番大切なのはみんなが集まること。
誰も無理をしないで、楽しく一緒に秋の夜長を過ごすこと。

食事が終わった後はプレゼントの開封。
自分が言うのも気が引けるけど、デリアはわれわれが送った
ブレスレットが一番気に入ったみたい。

翌日もわざわざ電話をかけてきてお礼を言ってくれたくらいだから。
よかった。

プレゼントの後はおしゃべりが続き、まだ何か食べてるグループもあるし、
われわれは踊りだした。

ローリーはこのときとばかり日ごろの女の一人暮らしではできない
寝室の模様替えを男兄弟やその友達とやっていた。

踊っておしゃべりして、ワインを飲んで・・・
夜中の1時半にやっとまた、きんきらきんのジャケットを着たのだった。


                      Keiko

 

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